Day1前半の90分。補完・チャット・スラッシュコマンドから、設計思想・ガバナンス・コスト管理までを公式の言葉と数字で押さえます。
Javaスクラッチ研修の続きに Copilot を重ねる
補完・NES・Chat、Ask/Edit/Agentの3モード
55%速い・73%フロー維持・PRマージ15%向上
2021補完 → 2026 CLI まで
主役は人、AIは検証前提の道具
新卒のうちに身につける5つ
文脈・分割・例示
なぜ平気で誤るのか
何を入れない/データの扱い
機能・セキュリティ・可読性・保守性
日立・ZOZO・ラクス・ファインディ
AI Credits 従量制、何が無料か
2日間で繰り返す言葉
配属後に定着させる進め方
この2日間は、Javaスクラッチ研修で身につけた書く力に GitHub Copilot を併走させる時間です。扱うのは下流工程(実装・テスト・デバッグ)で、配属後にそのまま使える形で持ち帰ります。
みなさんはServlet・JSP・Spring Boot を2ヶ月かけて手で書いてきました。その経験があるからこそ、AIが出したコードの良し悪しを判断できます。Copilot は書く速度を上げますが、何が正しいかを決めるのは引き続きみなさんです。
演習はすべて個人ワークです。手を動かして詰まったところを、その場で講師に聞いてください。配布フォルダを VSCode で開いて作業します。
GitHub Copilot は VSCode に組み込まれたAIペアプログラマーです。大きく分けて、勝手に出てくる補完と、こちらから話しかけるチャットの2系統があります。
タイピング中に灰色の続きが提案され、Tab で確定します。Next Edit Suggestions(NES) は次に直すべき箇所も提案します。補完は AI Credits を消費しません。
サイドのチャット欄で質問・修正依頼を出します。スラッシュコマンドやファイル参照を組み合わせて意図を伝えます。こちらはトークンを消費します。トークンとは、AIが文章を処理するときの細かな単位で、おおよそ文字数に比例し、多いほど課金されます。
チャットには Ask・Edit・Agent の3モードがあり、右に行くほど Copilot に任せる範囲が広がります。本研修は Ask と Edit が中心で、Agent は2日目終盤に触れる程度です。
| モード | やること | 本研修での扱い |
|---|---|---|
| Ask | 質問・説明。コードは書かず答えるだけ | 既存コードの読解に多用 |
| Edit | 指定した範囲をその場で書き換える | 実装・修正の主役 |
| Agent | タスクを分解し、複数ファイル編集やエラー自己修正まで自律で進める | 消費が大きいため終盤に紹介 |
チャット欄で / を打つと使えるコマンドの一覧が出ます。Java研修では次の3つが中心です。
どのコードを見てほしいかは @workspace(プロジェクト全体)や #file #codebase で指定します。関係するファイルを開いておくと、提案の精度が上がります。
出力が英語になりがちなときは、依頼文の最後に「日本語で説明してください」と添えると日本語になります。
GitHub Copilot には .github/copilot-instructions.md というファイルで、リポジトリ全体に共通の指示をまとめて出せる仕組みがあります。コーディング規約や使ってほしいライブラリを書いておくと、チャットの提案がチームの書き方に寄りやすくなります。
体感ではなく、公開された調査の数字で効果を押さえます。数値をクリックするとぼかしが外れます。まず自分で予想してみてください。
速度の実験では、Copilot 利用群が1時間11分、非利用群が2時間41分で完了し、完了率も78%対70%でした。満足度の調査では87%が「反復作業の頭の負担が減った」と答えています。Accenture の本番調査では、PR数8.69%増、提案受諾率およそ30%、生成された文字の88%がそのまま残った、といった結果も出ています。
GitHub Universe 2025(2025年10月)時点で、開発者2,000万人超が GitHub Copilot を利用しています。新規開発者の80%が利用1週目から使い始めた、という報告もあります。
補完だけのツールから、対話・自律エージェント・ターミナルへと広がってきた流れです。みなさんが使うのは、この延長にある2026年版です。
| 年月 | できごと | 出典 |
|---|---|---|
| 2021年6月 | 技術プレビュー公開(OpenAIのコード生成モデル Codex をもとにしたコード補完) | github.blog research |
| 2022年6月 | 一般提供開始(月額$10、VSCode 補完) | github.blog research |
| 2023年3月 | Copilot X 構想発表(チャット型UIへ拡張) | github.blog product-news |
| 2023年12月 | Copilot Chat 一般提供(全有料プラン込み、学生・OSS=公開ソフトウェアの保守者は無料) | github.blog changelog |
| 2025年2月 | Agent mode / Copilot Edits を VSCode に投入、NES も同時期 | changelog |
| 2025年9月 | Copilot coding agent 一般提供(非同期・自律PR生成) | changelog |
| 2025年10月 | Agent HQ 発表(Universe 2025、複数社エージェント統合) | github.blog |
| 2026年2月 | Copilot CLI 一般提供(ターミナルネイティブのエージェント) | changelog |
GitHub が公式ドキュメントで繰り返し述べているのは、主役は人、AIは検証前提の道具、という姿勢です。原文のまま読みます。
you are in charge, and Copilot is a powerful tool at your service ... it is still a tool capable of making mistakes, and you should always validate the code it suggests.
何を作るか、どの提案を採るかを決めるのは自分です。Copilot は強力ですが、間違える道具だという前提で、提案したコードは必ず確かめます。
Just as you would review a colleague's code, you should always assess, analyze, and validate AI-generated code.
AIが書いたコードも、同僚から受け取ったコードと同じように評価・分析・検証します。出てきたから正しい、ではありません。
Models are never perfect—sometimes they can hallucinate, provide incorrect answers, or give nonsensical responses.
もっともらしい誤りや、的外れな回答が返ることがあります。だからこそ、書かせて終わりにせず、読んで確かめる工程を残します。
GitHub公式の「Best practices for using GitHub Copilot」から、新卒のうちに身につけたい5つです。
最終的な判断と責任は自分が持ちます。採用するかどうかを自分で決めます。
大きな要求を一度に投げず、機能を分けて頼みます。入力例・出力例を添えると意図が伝わります。
関連ファイルを開き、無関係なファイルやチャット履歴は閉じる・消すと、提案がぶれにくくなります。
機能・セキュリティ・可読性・保守性の観点で評価し、リンターやコードスキャンも併用します。
一度で通らなくても普通です。表現を変える、ステップを分けると通りやすくなります。
GitHub公式が挙げる、文脈・分割・例示の3つです。同じ依頼でも、伝え方で結果が変わります。
何のための処理か、どのファイルのどこを直すのかを先に示します。関連ファイルを開いておくのも文脈の一部です。
一度に欲張らず、ひとつの依頼をひとつの目的に絞ります。通らなければさらに分けます。
こういう入力ならこう返してほしい、という具体例を添えると、狙いどおりになりやすくなります。
| 避けたい依頼 | 具体的な依頼 |
|---|---|
| make this better(漠然としていて方向が伝わらない) | 引数が null のときは IllegalArgumentException を投げて、メッセージに項目名を含めてください |
VSCode公式も「'make this better' のような依頼はAIに方向を与えない」と述べています。入力・出力・制約を具体的に書くほど、当たりが良くなります。
なぜAIが平気で誤るのか。仕組みを知ると、検証が必要な理由が腑に落ちます。
大規模言語モデルは、これまでの文脈から「次に来そうな単語」を確率的に予測してつないでいます。意味を理解して事実を確認しているわけではありません。そのため、文章としては自然なのに中身が間違っている、もっともらしい嘘が混じることがあります。同じ依頼でも出力が毎回少し変わるのも、この仕組みのためです。
存在しないメソッドやライブラリ、もっともらしいが誤った説明が返ることがあります。出力は出発点として扱い、コンパイル・実行・読解で必ず裏を取ってください。多くの場面では「明確に書く・適度な文脈を渡す・反復して直す」で精度が上がります。
便利さと裏返しのリスクがあります。何を入れてはいけないか、データがどう扱われるかを押さえます。
顧客の個人情報・機密情報、本番のAPIキーやパスワードなどの認証情報をプロンプトに入れないでください。判断に迷ったら、上長や社内窓口に確認します。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 公開コードフィルタ | 提案候補とその周辺およそ150文字を公開リポジトリと突合し、一致は破棄します。一致が起きる提案は全体の1%未満とされています。 |
| code referencing | 公開コードと一致した場合、マッチ先のURLとライセンス名を記録し、利用者が出典表記や除外を判断できます。 |
| content exclusion | 組織が特定ファイルを Copilot から除外でき、除外ファイルは補完が無効になり、他の補完にも使われません。 |
| 学習への利用 | Business / Enterprise はプロンプトもコード候補もモデル学習に使われません。無料版(Free/Pro/Pro+)は2026年のポリシー更新で学習に使われ得ます。 |
本研修は組織管理下の利用面を想定します。それでも、機密情報を入れない・出力を必ずレビューするという基本は、プランに関わらず変わりません。
同僚のコードと同じ目線で見ます。採用する前に、次の4点と動作確認を通します。
期待する入力で期待する結果が出るか。境界値や異常系も含めて確かめます。
SQLインジェクション、認証情報のハードコード、リソースリークなどが混じっていないか確認します。
命名・構造が素直か。自分が3か月後に読んでも追える形か。
重複や過剰な複雑さがないか。変更が一箇所で済む作りか。
レビューに加えて、AIに変更させたあとは必ずテストを実行します。動作で裏を取るのが、もっとも確実な確認です。
国内企業も全社導入を進めています。数字はいずれも各社の公開資料からです。
2023年10月に約200名で評価開始し約2,000名へ拡大。SPACE(生産性をいくつかの観点で測る枠組み)のアンケートで「タスクを迅速に完了」83%、生産性平均10〜20%向上、開発フレームワーク連携時のロジック生成率は78%から99%へ。
2023年7月に全社導入完了。78.9%が「より生産的」、58%が「1日30分以上」を節約し、費用対効果は利用料差引後で最大95,604円/人・月と試算。
2026年6月から、Copilot の課金は AI Credits のトークン従量制に変わりました。何が無料で、何を消費するのかを押さえます。
インライン補完と Next Edit Suggestions は Credits を消費しません。気兼ねなく使えます。
チャット、/explain・/fix・/tests、Agent モードはトークンを消費します。1 credit = $0.01 です。
料金はトークン100万個あたりの金額です。
| モデル | 入力(100万トークンあたり) | 出力(100万トークンあたり) |
|---|---|---|
| Claude Sonnet 4.x | $3 | $15 |
| GPT-4.1 | $2 | $8 |
講師指定のミドルクラスモデル(性能と消費のバランスが取れた中位のモデル)・低effort(effortは推論にかける深さの設定で、低いほど速く消費が少なくなります)設定のまま使ってください。勝手に高性能モデルへ切り替えると消費が増えます。残量は右下の Copilot アイコンから使用状況で確認できます。本研修60名×2日の消費見積もりは約$86で、Business枠の月$1,800のおよそ1/20以下です。枯渇しそうなら補完オンリーに切り替えます。
提供モデルの一覧やUIの細部は更新が速く、ここに挙げた名前が研修当日の唯一のデフォルトとは限りません。研修直前に公式の supported-models を再確認し、実機のスクリーンショットを推奨します。迷ったらモデルピッカー(使うモデルを選ぶ画面)で Auto、研修中は講師指定のミドルクラス・低effort で統一します。
2日間で繰り返し出てくる言葉です。英語表記とあわせて頭に入れておきます。
入力中に出る灰色の続き。Tabで確定。Credits 消費なし。
話しかけて質問・修正依頼を出す対話欄。
/explain /fix /tests など。/ で一覧が出る。
タスクを分解し自律で複数ファイルを編集する重いモード。
AIに渡す前提情報。開いているファイルや#指定で与える。
もっともらしいが誤った出力。検証が必須な理由。
AIへの指示文。文脈・分割・例示で精度が上がる。
公開コードと一致した提案のURL・ライセンスを記録する仕組み。
特定ファイルをCopilotの対象から外す組織設定。
2026年6月からの従量課金単位。1 credit = $0.01。
Javaのテストを書くライブラリ。/tests で雛形を作る。
層をまたいでデータを運ぶための入れ物クラス。
AIが文章を処理するときの細かな単位。おおよそ文字数に比例し、多いほど課金される。
作成・参照・更新・削除という、データを扱う4つの基本操作。
2日で終わりにせず、配属後に定着させるための現実的な進め方です。背伸びせず、毎日の作業に溶かしていきます。
座学のあとは、VSCode を開いて補完・チャット・スラッシュコマンドを実際に動かします。手元のクレジット残量の確認から始めます。